借金の返済に困っているときに利用を検討する自己破産ですが、生活にどのような影響があるのか不安に感じる人も多いです。全く影響がないわけではありませんが、生活ができなくなることはありませんので、どのような制限があるのか把握しておきましょう。
深刻な影響が出ることはない
自己破産をすると全てが終わりになってしまうような印象を持っている人がいますが、そこまで深刻に心配する必要はありません。借金の返済が困難になった人を救済するために国が定めた救済制度なので、利用した後も生活できる配慮があります。
経済的な信用に傷が付く
自己破産をしたときの影響に、経済的な信用に傷が付くことが挙げられます。今後5~7年程度はクレジットカードの発行やローンの契約などが困難になり、生活に不便を感じる場面が出てきます。具体的には、手続きを行ったときに債権者が信用情報機関に事故情報を登録するように通知するので、一般的にブラックリストに載ったと呼ばれる状態になる影響です。金融機関は申し込んだ人の信用を判断するための材料として、このデータベースに記録されている情報を参照しており、自己破産などの問題が起きている人に対して、再び返済できなくなるリスクが考えられるので契約しないことが多いです。これは永続的ではなく、信用情報機関には事故情報を保持する期間が定められており、5~7年で削除されるので、それ以降であれば審査に通ります。
なお、自己破産以外の債務整理を行った場合でも同様に記録されるので、特別に重い制限であるわけではありません。61日~3か月以上の連続した支払いの延滞を起こした場合でも事故情報が残るので、借金の返済が困難になったときには、自己破産などの債務整理による解決を検討した方が良いでしょう。
家族の信用には影響しない
信用情報機関に事故情報が登録されると、クレジットカードやローンの利用に影響が出ますが、この対象になるのは自己破産を行った本人だけです。同居している家族の信用には全く影響しないので、問題なくクレジットカードやローンの審査に通ります。例えば本会員が審査の対象になる家族カードの発行をしてもらうこともできるので、1人暮らしでなければこの制限はある程度軽減が可能なものです。
ただし、注意が必要になるのが保証人になる場合であり、断られることがあります。これは保証人の役割によるもので、名前を使ってその人の身分などを証明するというだけのものではないからです。借り入れをした人が返済できなくなれば保証人が代わりにそれを引き受けて弁済するものなので、自己破産などの債務整理をしているとその役割を果たせるだけの経済能力がないとされます。
また、社内ブラックにも注意した方が良いでしょう。信用情報機関ではなく、各社で独自に保持する自社の記録で期間は決められていません。半永久的とも言われているので、対象になっていた金融機関などの債権者と再度契約するのは時間が経過しても難しくなります。
家族に与える影響はあるのか
自己破産したときに、家族と同居していた場合には影響が出てしまうのかという点も気になるところです。これは状況によって異なり、処分の対象になる財産を持っている場合などにはある程度の影響が出ることは知っておきましょう。
自己破産に伴う財産の処分
自己破産を無条件で行えると債権者は大きな損失を被ることになるため、時価20万円以下の財産と99万円以下の現金を除いて処分し、それを債権者に配当します。これにより、自宅が自己破産する本人の名義、またはローンの返済中であった場合には手放すことになり、引越しするが必要です。引越しの際にアパートを借りられないという心配はありませんが、家賃の支払いがクレジットカードであったり保証会社の契約が求められるものでは、信用情報に傷があるので利用できない可能性があります。
過度に高価なものを除けば、生活必需品と見なされる家具や家電などは残せるので、自己破産によって生活ができなくなる心配はありません。家族の財産も対象外になるので、自宅の名義が配偶者である場合などには引越ししなくても済みます。自動車の場合もローンを完済しており、査定額が低ければ対象から外れて所有を続けられます。
なお、処分を回避するために手続きを行う前に名義を変更するのは絶対にやめましょう。財産の隠蔽は、自己破産の免責不許可事由に該当する行為です。発覚すれば失敗し、借金の返済義務から解放されなくなります。
家族に知られずに手続きできるか
自己破産を家族に知られずに手続きができるのか、という疑問があります。例えばアパートで生活している場合では追い出されることはないので、気付かれない場合があります。重要になるのは管財事件と同時廃止事件のどちらになるのか、という点です。免責不許可事由に抵触しているか債権者に配当するだけの財産を持っている場合は前者になり、破産管財人を選定して様々なチェックが行われます。郵送物も一度転送されてしまうので、これらで家族が気付く可能性が高いです。免責に問題がない状況であり、配当できる財産がないことも明確な場合には後者の手続きになります。実際に自己破産をした人の割合では、同時廃止事件の方が非常に多いです。
このように状況によって知られずに済む場合はありますが、弁護士と連絡を取ったりするなど自分の行動に変化があるので、意識していると手続きが不便になります。また、その時点では内緒にできていても、クレジットカードを使わなくなるなど今後の生活の制限によって不審に思われ、分かってしまう可能性が高いです。隠しながら行うよりは、事情を説明して協力してもらった方が良いでしょう。
仕事に影響することはない
自己破産する際に仕事を辞めさせられるのではないか、今後の就職ができなくならないかという不安がありますが、基本的には影響はないので心配ありません。通常であれば、職場や周囲の人に知られる可能性も非常に低いです。
周囲には知られずに済む
自己破産をするときに弁護士に対応を依頼しますが、守秘義務があるので周囲に話すことはありません。信用情報機関に事故情報が登録されますが、この参照ができるのか金融機関であり、審査に用いるときに制限されています。誰にでも閲覧ができる官報に掲載されますが、実際にこれを閲覧する企業や一般人はいませんので、これが原因で知られることもほとんどないでしょう。自分や家族が口を滑らせてしまわないように、意識すると良いです。
ただし、自宅が処分の対象になる場合では周囲に知られる可能性があります。競売になっても破産管財人などは配慮して調査を行うので、この時点では特に問題はありません。しかし、入札期日が近くなれば物件の情報がインターネット上に公開されるため、これを見ていれば知られてしまいます。見ていなかった場合でも、購入を希望する一般の人や投資家、不動産業者などが確認のために訪れるようになるので気付かれるでしょう。競売物件について、裁判所は瑕疵責任を負わないので購入者は問題がないのか自分で確認しようと考えます。このときに自己破産者への配慮はなく、周囲の住人に聞き込みをするので、競売になっているのが分かります。
就職に影響することはない
何らかの理由で自己破産したことが勤務先に知られたとしても、それを理由に解雇させられる心配はありません。労働力との因果関係がないので、不当な扱いになります。ここで注意したいのが、就業規則などに明記されていた場合ですが、それでも法律に反する規則になるので無効で解雇できないので、トラブルになりそうなら労働基準局や弁護士等に相談しましょう。
就職する際に自己破産していると分かっていると影響が出る可能性は考えられますが、これも自分からその事実を公開しなければ問題になることはないです。履歴書に書く必要はないので、通常であれば影響は出ません。同様に、家族が就職する場合にも知られませんので安心です。
ただし、注意が必要になる業界に金融機関があり、気付かれる可能性があります。採用を理由にして信用情報機関の参照はできませんが、自己破産の場合は官報に掲載されていることが影響します。誰にでも閲覧できるので、これをチェックして記録している場合があるからです。金融機関のクレジットカードやローンの規約に官報の記載がある場合、この可能性が高いので採用が難しくなる場合があります。
自己破産したときの制限とは
自己破産したときに、いくつかの制限があります。規定されていても実際には全く制限を受けないケースもあるので、どのようなものがあるのか知っておきましょう。深刻な影響が出ることはないので、それほど心配する必要はないです。
資格や住居に関する制限
自己破産したときに一部の資格や職業に制限を受けることになり、例として弁護士や司法書士・警備員など様々なものがあります。不安な場合には弁護士に相談して確認すると良いですが、これらに該当していない人であれば全く関係のないものです。一般的な会社員や公務員、医療関係者は対象外になります。また、これは永続的なものではなく手続き中だけになるので、免責が決定すれば解除されます。この期間中は該当する資格や職に就けないので既に就いている場合は一時的に職を失いますが、復帰が可能です。
同様に手続き中に制限を受けるのが住居についてであり、遠方への旅行や引越しを無断ではできなくなります。これらを行うには裁判所から許可を得る必要がありますが、正当な理由があれば許可が出るものであり、近隣の外出には関係しないのでそれほど心配しなくても良いでしょう。
なお、この制限は自己破産者が外出などをしていると財産の配当を行う際に支障が出るのが理由なので、必ず課せられるものではないです。同時廃止事件になったときには破産管財人の選定が行われず、手続きはすぐに終了するので影響しなくなります。
借り入れなどに関する制限
自己破産すると信用情報に傷が付くので、クレジットカードやローンの利用などが困難になりますが、これは法律上の制限ではなく金融機関がリスクを回避するために判断するものです。審査の基準は各社で異なっているので、年収が高い、職を失う可能性が低いなど属性によって事故情報が残っている場合でも借り入れができる場合もあります。ただし、官報に掲載されると悪徳業者から勧誘が来ることがありので、誰でも借りられるなどの甘い言葉に騙されないように注意が必要です。中小の消費者金融なら契約できるものがありますが、事故情報があると審査は厳しいのであまり期待はできないです。
自己破産した後には、借金をしないで生活できるようにお金の使い方を見直すのが今後のためになります。問題になるのが再び返済不能に陥ったときであり、免責不許可事由の中には前回の決定から7年以内である、というものがあります。免責が1回しかできないわけではありませんが、短期間に繰り返した場合には許可されない可能性が高いです。この場合も特段の事情があれば裁判所が配慮することがありますが、確実なものではないので避けた方が良いでしょう。
まとめ
自己破産をすれば財産を処分したり、信用情報に傷か付くことになるので生活への影響は避けられません。しかし、大きな問題になることは少ないので生活できなくなる心配はないです。自己破産をせずに返済を続けた方が生活費が捻出できずに困窮するなどの問題が出るので、弁護士などに相談して対応を決めると良いでしょう。