自己破産をする時に知っておきたい管財事件と引継予納金

借金を返せない時は債務整理という方法があり、中でもお金がないという人には自己破産がお勧めです。ただし自己破産はメリットもデメリットもあり、場合によっては管財事件ということもあります。この管財事件には引継予納金というお金を払いますが、それが負担になる人は少額管財が運用できます。

借金を免除してもらえる自己破産

借金を返済できない時の手段として債務整理があります。特に定収入がないとか、収入そのものが少なくて返済できない場合は自己破産がお勧めです。自己破産は借金を返すのを免除されますが、その代わりブラックがつくなど、デメリットの部分もあります。

債務整理の方法について

借金返済ができなくなった場合には、債務整理があるというのをご存知の方は多いでしょう。この債務整理には、4つの種類があります。まず任意整理と自己破産があり、前者は債務額を圧縮して分割で返済します。圧縮とは金利を減らして借金全体の金額を少なくすることです。後者は裁判所で破産の申立てを行い、免責が下りたらすべてが終わって借金がなくなります。それ以外にも個人再生や特定調停という方法もあります。個人再生は家を手放したくないという時に、住宅ローンだけを残して後を整理してしまう方法です。この方法は債務額はかなり減りますが、手続きに時間がかかることがあります。特定調停は任意整理と似ていますが、任意整理が弁護士や司法書士に依頼するのに対し、こちらはすべての手続きを自分で行います。その上で、調停委員会を通して債権者と交渉し、返済額を決めることになります。この特定調停以外は、弁護士や司法書士に依頼した方がスムーズに債権者との交渉が進み、時間もかかりません。ただし司法書士の場合は、1社に付き借金が140万円までという上限がありますし、弁護士の方が交渉が早いともいわれています。

自己破産とブラックリスト

もし定収入があるとか、売却して返済に充てられる財産がある場合は任意整理がいいでしょう。しかし定収入がないとか収入が少ない、売却できるような物がない時は自己破産を検討するといいかもしれません。自己破産を選ぶと、借金が帳消しになってしまうわけですから、新たな気持ちで生活を再建できるようになります。ただやはり債務整理をすることになるので、ブラックリスト入りは避けられません。このブラックリストというのは、正確にいえば個人信用情報に事故情報が登録されることです。この事故情報は異動情報とも呼ばれます。信用情報にこれがあると、たとえばローンとかクレジットカードの申込をした場合審査に通りにくくなります。無論永久に登録されるのではなく、5年間のみの登録ですが、銀行関連の個人信用情報に限り10年間登録されます。いずれにしても当分クレジットカードは持てませんので、カード決済をしている場合は口座引き落としにするとか、デビットカードを作ってそれで行うようにしましょう。それ以外にも、自己破産をした場合は何らかの形で生活に影響を及ぼすこともありますので、その点にも注意するようにします。

管財事件とはどのようなものか

自己破産はブラックが付くのみならず、職業制限が適用されたり保証人に迷惑がかかったりもします。そのようなことも考えて、弁護士や司法書士とよく話し合うようにしましょう。さらに財産が多少ある場合は、管財事件になって引継予納金が必要になります。その場合の予納金の負担を減らす方法として少額管財があります。

ブラック以外のデメリットとは

自己破産には職業制限というものがあるのをご存知でしょうか。金融関係の仕事をしているとか、士業の仕事についていて自己破産をした場合は、一定の間就業できません。あるいは他の部署へ異動となったりもします。それから口座を持っている金融機関からの借金で自己破産となった場合、口座が凍結されることがあります。生活費などは早めに引き出すようにしておくといいでしょう。またその借金に保証人がいると、保証人宛てに督促が行くようになります。自己破産はこういうことが起こる可能性があるので、まず弁護士や司法書士とよく相談することです。もちろん保証人のいない、たとえば個人向けのカードローンなどの場合はこれには該当しません。そして自己破産をする時の費用は、大体30万円ほどはかかると考えておきましょう。この費用も弁護士や司法書士によって異なります。もしお金がなくてとても一括で払えない時は、分割払いや後払いも利用できます。その他には、法テラスの民事法律扶助を受けることにより、一時的にお金を立て替えてももらえます。この民事法律扶助の立て替え金は、後から分割で返して行くことになります。

同時廃止事件にならない場合

ところで自己破産をした場合、免責が下りたらすべての借金から解放されますが、場合によってはそう行かないこともあります。個人でお金もなくて、とても借金を返すのが無理な場合は同時廃止事件となることが多いです。この同時廃止というのは、破産手続きの開始とほぼ同時に終了となり、免責が下りることです。一般に自己破産とはこの方法だと受け取られています。しかしもし法人であるとか、個人でもいくらか財産がある場合は管財事件という方法を採ります。この時は破産管財人が間に入り、破産に至るまでの手続きを行うことになります。財産がある場合はそれをお金に変え、債権者に配当することになるので、当然その費用、そして管財人への報酬などが発生することになって、同時廃止の場合よりも費用がかかります。自己破産にかかるお金のことは予納金と呼ばれますが、この管財事件にかかる予納金は引継予納金と呼ばれています。予納金はかなりの金額となることもあり、自己破産をした意味がなくなるということも往々にしてあります。そういう時の対処方法として採られるのが、予納金の額を少なくした少額管財の運用です。

少額管財を運用する方法

少額管財とは、管財事件で払う引継予定金の負担を軽くするもので、代理人が弁護士の場合に限り適用されます。また裁判所によっては少額管財の運用ができなかったり、引継予納金が一括払いしかできなかったりすることもあるので注意が必要です。

少額管財の金額と運用方法

この方法を運用した場合は、どのくらいのお金がかかることになるのでしょうか。一応の目安としては、20万円程度とされています。ですから管財事件になっても、少額であればそこまでお金を払わずにすむことになります。ただしこの場合には、条件があることを頭に入れておきましょう。もし弁護士に代理人を依頼していた場合は、この程度で収まりますが、それ以外の場合はもう少し金額が高くなることがあり、最高で50万円ほどになるともいわれています。また裁判所によっても金額は異なって来ます。それから事案が簡単な場合は20万円でもOKなのですが、もう少し内容が複雑な場合は金額がもっと高くなることがあります。管財事件が気になるという時は、この点についても代理人とよく話し合っておくことをお勧めします。それと一部の裁判所では、この少額管財というシステムが適用されていないこともあります。自己破産は破産法に基づいて行われますが、破産法には管財事件はあっても少額管財というのはありません。従って裁判所によっては運用されないということもあります。この点も事前確認をしておくようにしましょう。

裁判所によっては分割払いも可能

引継予納金は基本的に一括払いとなります。しかし一括で払えない時は、どのように対処すればいいのでしょうか。まず裁判所にもよりますが、分割払いが認められていることもあります。たとえば東京地裁の場合は、4回に分割することができますので、20万円とした場合、5万円ずつを支払うことになります。ただこの分割払いが認められている裁判所は、これまたかなり限られています。同じ東京地裁であっても、立川支部の場合は分割払いは認められていません。少額管財を運用する時と引継予納金を支払う時は、自分の最寄りの裁判所が、それに該当するのかどうかもチェックしておくようにしましょう。自己破産というと、申立てをして免責が下りて、それでおしまいと考えてしまいがちです。確かにそれで終わってしまうこともありますが、そのケースの方がどちらかといえば多いです。とはいってもそれがすべてではなく、管財事件となってしまうこともまたあるのです。もし財産、たとえば自分名義の家などがある場合は、そうなることを考えたうえで自己破産に臨むようにし、代理人となる弁護士や司法書士にも相談することが何よりも求められます。

同時廃止事件と管財事件

自己破産には自動廃止事件と管財事件があります。管財事件の場合はお金が別途かかりますが、少額管財を利用すれば少なく抑えられます。それから管財事件は財産のある人のみならず、簡単に免責が下りない人もその対象となることもあるのです。

自己破産は同時廃止だけではない

自己破産には同時廃止事件と管財事件があることを、初めて知ったという人もいるのではないでしょうか。とにかくお金がなく売却できる物もない、保証人付きのローンでもないという場合は、同時廃止で比較的簡単に終わることができます。無論それに伴うデメリットがありますが、それも工夫次第で乗り切ることが可能です。ただ管財事件となった場合は、それ相当の手続きを行うことになります。通常の自己破産で必要となる予納金以外に、破産管財人やその仕事に対する引継予納金が必要になります。それでなくてもお金がない時に、またお金がかかってしまうことにもなりかねません。その救済策として、引継予納金の金額を20万円程度にとどめた少額管財の運用ができます。これなら払える人もいるでしょうし、裁判所によっては分割払いも可能です。その一方で、裁判所によっては少額管財が認められていないこともあります。仮に運用できたとしても、引継予納金の分割払いができないということもあるので、まず最寄りの裁判所で確認してみましょう。もちろん、代理人ともよく話しておきます。なお少額管財の場合の代理人は弁護士がお勧めです。

自己破産関連で知っておきたい点

自己破産というと、とにかくネガティブなイメージがあるという人も多いでしょう。しかし収入が少なくて、借金を返済できない時にはとても便利な方法です。もちろん返済が何とか可能である場合、一部のローンを残したい場合は任意整理や個人再生を選ぶこともできますが、それが難しい時は自己破産をして借金をなくし、生活を立て直すようにするといいでしょう。個人の自己破産の場合は通常同時廃止事件、つまり破産手続きの開始と同時に終了という方法が採られるので、比較的短期間で免責が下りますが、財産が多少ある場合は管財事件となるので、お金も時間もかかります。そのお金の負担を少しでも軽くするのが少額管財事件です。またすぐに免責が下りず、管財事件となる人の中には、簡単に免責を与えてはいけない人も含まれます。自己破産なんて簡単なものだと思うのは正しくはありません。場合によっては、かなりの時間がかかるものでもあるのです。それからもし自己破産を再びする場合は、前の分から7年が経過していないとできません。その場合も事情によっては審査が厳しくなり、免責が下りずに全額返済ということもあるので気をつけましょう。

まとめ

借金の返済が難しくて自己破産を行う例はよくあります。借金が免除される方法ですが、一方でブラックが登録されたり、職業制限がかけられたりもします。また破産手続き開始と同時に終了する、いわゆる同時廃止事件でない場合は管財事件になります。その時は少額管財として金額を減らせますが、裁判所によってはできないので要注意です。

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