自己破産のうち少額管財事件の手続き方法とその流れ

自己破産の申立ては同時廃止事件、管財事件のいずれかの方法で処理されます。裁判所によっては管財事件を処理する時、少額管財事件として処理するところもあります。今回は、少額管財事件の手続きとその流れについて、手続き上のポイントなども交えながらご紹介します。自己破産手続きの流れを知りたい時の参考にしてください。

弁護士に相談〜受任通知の送付

自己破産を選択する時は、専門的知識を持つ弁護士に相談するのが無難。無料相談を受け付けている法律事務所も多いので、自己破産の対象になるかどうか相談しやすいです。自己破産を選んだ場合、弁護士と委任契約を締結しますが、その後受任通知に進みます。

弁護士による無料相談を利用する

自己破産は債務整理の方法のひとつで、簡単に言うと借金をゼロにするための手続きです。ギャンブルや事業の失敗、失業して家のローンが支払えなくなってしまったなど、借金を抱えてしまう要因はいくつかあり、時には返済が難しいほど借金が膨らんでしまう場合もあります。借金を返済するめどが立たず、もし自己破産という選択をする場合、まず初めに弁護士に相談します。いきなり弁護士なのかと思うかもしれませんが、この相談は、自己破産可能かどうか弁護士に判断してもらうことが目的です。

無料で相談を受け付けている法律事務所は多く、無料相談できる地元の法律事務所も見つけやすいでしょう。無料相談は通常電話やメールで問い合わせることになります。自己破産が可能かどうかを調べることが目的で、弁護士は残っている借金の金額や借入金額、業者との取引、家計状況といった質問をしてきます。こうした質問に正確に答えられるように予め必要な数字を出しておくと相談がスムーズにいきます。自己破産の意味がよくわからなければここで聞いてもいいですし、もし弁護士が自己破産の可能性が低いと判断した場合、それはなぜか理由を聞いてもいいでしょう。

弁護士と委任契約を締結する

無料相談で弁護士が自己破産可能と判断した場合、弁護士と委任契約を締結することになります。この契約を交わすことで弁護士は依頼人に代わって自己破産の申立ができるようになるのです。注意することはここから弁護士費用がかかるということです。どのくらい経費がかかるかは法律事務所によって変ってきますが、少額管財事件の場合自己破産の着手金、成功報酬金、日当がかかります。着手金の相場はだいたい20万円、成功報酬金の相場は10万円ほどとなっています。日当は裁判所に出頭するといった費用で、1回の出頭につき10,000円が目安になります。自己破産の委任契約を交わす時注意するのは、支払う費用内で何をどのくらいやってくれるのかを確認することです。例えば債権者が訴訟を起こすことは珍しいことではありません。そういう場合手続きをしてもらえるのか、それとも別途費用がかかるのかといったことはしっかりと確認しておきたいです。

弁護士と委任契約を締結すると、次は債権者に対して受任通知を行います。この通知で債権者は弁護士が代理人となって債務処理をするということを知るわけです。この時点で債権者は借金の取り立てをすることができなくなります。通常受任通知を送付する時は債権者に対して取引履歴の開示請求も一緒にします。開示請求をすることで、債権者は業務帳簿を開示して必要な情報を提供します。

債権などの調査〜書類の作成

弁護士は債権調査や資産の調査を参考にしながら、自己破産申立ての準備をします。調査するのは責務がいくら位残っているのか、どんな財産を持っているのかを調べることで自己破産申立ての書類を作成することができるからです。

債権など必要な調査の実施

受任通知送付後弁護士は債務整理にとりかかりますが、その時に欠かせないのが債権調査です。借金の借入先や返済金額、借入時の保証人の有無と言ったことを調べ、利息制限法に沿った債権額をはじき出します。もしここで返済する必要のない過払い金があった場合、過払い金の返還を求めるよう債権者に通知しますが、これが過払い金返還請求のことです。過払い金の問題は初め話し合いで解決を目指しますが、和解に至らない場合は訴訟に発展することもあります。

債権調査に加えて弁護士は依頼人の資産状況も調査します。これは自己破産による換価処分の対象になる資産を依頼者が持っているかどうかを調べるためです。換価処分というと持ってるものすべて差し押さえられるイメージがありますが、中には対象外になるものもあり、弁護士は提出された書類を参考にしながら換価処分されるものとそうでないものを区別していきます。

たとえばギャンブルで大きな借金を作ってしまった場合、裁判所は免責不許可事由を出します。これは裁判所はその借金について免責を認めないということなのですが、債権調査や資産調査に加えて、弁護士は免責についても調査します。免責不許可事由が下りたとしてもその後免責が認められることもありますし、免責不許可事由を隠して後で見つかった場合裁量免責が受けられなくなるので、ここは弁護士に正直に伝えます。

自己破産申立て書類の作成

必要な調査が済んだ後、依頼者は債務整理手続きをするか自己破産手続きをするか選択する必要がでてきます。もし自己破産を選んだら裁判所に出頭することになりますが、その前に自己破産申請に必要な書類を作成します。

この書類のことを破産手続開始・免責許可の申立書といいますが、各裁判所のサイトでダウンロードが可能です。申立書の雛形を用意している法律事務所もありますが、裁判所によって形式が違うので、該当する裁判所から取り寄せるのが無難です。申立書は自分で記入する必要がありますが、弁護士と相談しながら行っても問題ありません。なお、申立書には資産に関する資料など関連した資料を添付します。資料を作成したらいよいよ自己破産の申立です。

自己破産の申立は管轄の地方裁判所にて受け付けていますが、この時申立手数料と郵便切手も添付します。申立書が受理された時点で官報広告費が発生するので納めます。東京地方裁判所本庁など裁判所によっては即日面接を実施している場合があります。即日面接は、申立書提出当日や提出後3日以内に弁護士(代理人)が裁判官と会って事件の内容について説明するという面接方法です。その後申し立てされたケースが同時廃止事件になるか少額管財事件となるか判断が下されます。

審尋手続き〜管財人の選出

破産者は裁判官から借金の経緯など質問されることはありますが、そのことを破産者審尋と呼びます。もし代理人がいれば破産者審尋を受ける必要はなく、省略できる過程です。破産手続開始決定後は破産管理人が選ばれ、打ち合わせを行います。

破産者審尋と破産管財人選出

破産者審尋は裁判官が破産者に対して質問することを言いますが、もし代理人を立てていない場合は裁判所に出頭する必要があります。例外を除き代理人を立てている場合は破産者審尋は行われません。つまり、弁護士に債務整理を依頼している場合は、この審尋を省略することが可能なのです。破産者審尋が終わると裁判所は破産手続開始決定を下し、少額管財事件ではこの決定と同時に、破産管財人が選任されます。

破産管財人は、その裁判所が管轄している地域にある法律事務所に所属している弁護士であることが多く、選任された人物には自由財産を除いた申立者の財産を管理し処分する権限が与えられます。ここで破産管財人に対する報酬が発生し、申立者は裁判所に予納金(通常は20万円)を納める必要が出てきます(予納金を納めるのは後日)。破産管財人は申立者の財産を管理したり、処分して発生した配当を債権者に分けると言った作業をします。破産者に送られてくる郵便物はすべて破産管財人のところに転送され、場合によっては債権者集会にも参加しなければなりません。選任後はこうした状況がおよそ3ヶ月ほど続きます。

破産管財人と打ち合わせをする

破産管財人が決まると裁判所から連絡がきますが、その後速やかに破産管財人と打ち合わせをして面談日を調節します。手間がかからないような少額管財事件は、話し合いも簡単に済みますが、複雑なケースでは、債権者集会や裁判所に何度か足を運ぶ必要も出てくるので、こうした打ち合わせは手間がかかり、ある程度の時間が必要になってくるかもしれません。打ち合わせは破産手続開始決定までに終わらせると決められているので、破産管財人選任から打ち合わせの日程調整まであまり時間はかかりません。

選任された破産管財人は,財産の管理をする専用の口座を開設します。口座の名義は破産管財人で、予納金を納めるのはこの口座になるので、口座開設の連絡が来たらすぐに予納金を振り込みます。予納金を支払うのは破産者ですが、代理人を立てている場合代理人が行います。予納金は一括で支払う必要はなく、分割払いも可能。月額にすると5万円ほどになり、支払い方法は申立時または破産者審尋の時に、裁判所に伝えておきます。引き継ぎ予納金の金額は、債権者数や法人かどうかで変ってきますが、個人の場合20万円が原則です。

破産管理人と面談〜配当期日

破産管財人と面談日の打ち合わせをして実際に会います。この面談は破産管財人がその後行う管財業務を円滑に行うためで、破産者は業務に協力する義務があり、持っている財産は債権者に配当されることもあります(配当期日)。

破産管財と面談する時の流れ

破産管財人が決定すると、後日その人物と面談することになります。面談する場所は通常破産管財人の法律事務所で、申立者は借金ができた経緯と言った質問を受けます。破産管財人は事前に資料に目を通していていますが、その上でわからないことを聞いてきます。この面談には依頼している弁護士も同行するので、もし質問の内容がわからなかったり答えに困った場合は、弁護士に聞くといいでしょう。面談でのポイントは、聞かれたことに対して正直に答えることになります。

破産管財人は財産の処分や換価処分といった管財業務を行いますが、破産者は業務に協力しなければならないと決められています。もし、非協力的な態度をとると免責不許可事由となる可能性があるので注意が必要です。破産手続きの過程または途中で債権者集会が開催されることがあります。この集まりには債権者本人も参加することが可能で、破産管財人は集まった債権者に向かって財政状況などを報告します。債権者集会は通常1度開催されますが、複雑なケースの場合は債務の整理が終わるまで何回か行われています。破産手続が終結すると、免責審尋が行われます。

免責許可の決定〜配当期日

破産手続きが終わると免責審問に入ります。そしてこの審問が終わっておよそ1週間後に、裁判所から免責許可か不許可決定かの連絡が来ます。裁判所は申立者が債務の支払能力がないと判断した場合は免責を認める判断を下し、申立者の責務の支払い義務がなくなります。免責許可が確定するまでの時間ですが、決定されてから官報公告まで2週間かかり、さらに2週間待つことになるので、許可が確定するまでにおよそ1ヶ月ほどかかるということになります。反対に不許可決定が出た場合は、自己破産の申立が失敗したということで、借金は免除されずに残ります。この決定に納得できなければ、高等裁判所で異議申し立てをします。

破産者が配当を持っていた場合、債権者集会などで配当期日を設定します。配当については破産管財人が処理するので、破産者は基本的に出頭する必要はありません。配当期日はいつ設定されるのかということですが、それは破産管財人次第で、換価処分が完了するまでの期間には個人差があります。状況がシンプルであれば配当期日の設定までスムーズに行きますが、管財業務終了に時間がかかる場合は、それだけ遅くなります。

まとめ

自己破産には種類があり、少額管財事件の場合は弁護士を代理人として処理することになります。自己破産の手続きは手間がかかる面もありますが、大体の作業は弁護士に任せることになるので、自分の要望にあった弁護士を選ぶことと、相談しながら手続きを進めていくことがポイントです。

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