自己破産にはメリットもある代わりにデメリットもあります。とりわけ財産がいくらかあって自己破産をする場合は管財事件といって、破産管財人が間に入り、裁判所に予納金を納めることになります。この予納金の額を少なくし、負担を軽くすることを少額管財事件といいます。
借金返済が苦しい人は債務整理を
借金がなかなか返済できない時は、債務整理をした方が色々な点で楽です。債務整理には任意整理や自己破産、個人再生と特定調停の4つの種類があり、特定調停以外は弁護士や司法書士に依頼することになります。自分の生活や収入に合った無理のない方法を選ぶようにしましょう。
弁護士や司法書士に頼みましょう
お金を借りていて返済できなくなっているのに、そのまま返し続けるのはかなり大変なものです。多重債務といって、返済のために他からお金を借りる人もいますが、借入件数が増えるだけなので、あまりお勧めできません。それよりも、債務整理をした方が色々な点でメリットがあります。債務整理には任意整理、自己破産、個人再生と特定調停があり、特定調停以外は弁護士や司法書士に頼んで手続きをしてもらいます。特定調停の場合は、自分で裁判所で手続きを行い、調停委員会を開いて返済額を決めます。しかしお金を借りた会社、つまり債権者との交渉は、やはり弁護士や司法書士の方がうまく行くことが多いです。特定調停のメリットは、弁護士や司法書士の費用がかからないことですが、その代わり自分ですべてやるわけですから、場合によってはかなり大変なこともあります。任意整理や自己破産、個人再生は弁護士や司法書士を通して行いますので、費用はかかりますが、プロに任せているだけ安心できると言っていいでしょう。これらの3つの方法もそれぞれ特徴がありますので、その人の生活や収入に一番合った、無理のない方法を選ぶようにします。
それぞれのやり方の特徴とは
まず任意整理は借金を圧縮し、分割で決められた期間内に返済を行う方法です。借金の圧縮というのは、金利の分をカットするということです。それだけ金額は少なくなりますので、返済しやすくなります。任意整理の場合は、過払い金が見つかることも多いです。過払い金についてはご存知の人も多いでしょう。かつて消費者金融では、法定金利20パーセントを超える金利をつけてお金を貸していました。しかしこれが最高裁の判決で違法と認められ、多く払い過ぎた金利の分を取り戻せるようになったのです。この払い過ぎた金利の分が過払い金です。任意整理そのものは定収入があったり、また売却できる財産などがあったりする人に向いています。定収入がないとか、財産がない人の場合は自己破産がいいでしょう。自己破産は破産の申立てを裁判所に行い、その後免責が下りるのを待ちます。免責が下りたら借金の返済義務はなくなります。個人再生というのは、住宅ローンを残して債務整理を行うことです。家を残せて、しかも借金の額がかなり少なくなるというのが大きな強みです。その代わり、手続きにいくらか時間がかかることもあります。
債務整理のデメリットと自己破産
自己破産や個人再生は裁判所を通すため、個人情報が官報に載ります。これを狙って来る闇金には要注意です。それから債務整理をするとどうしてもブラックリストに載りますし、自己破産の場合は特に色々と制約があります。その1つに管財事件があります。
ブラックの登録は不可避です
任意整理は弁護士や司法書士を通すのみですが、個人再生や自己破産の場合は裁判所が関わってきます。そのためこの2つの方法のいずれかを選択すると、官報に個人情報が掲載されます。官報の情報を得る人はかなり限られていますが、闇金が官報をチェックしていて、融資のDMを送りつけたりします。もし自己破産や個人再生の後に、よく知らない会社からDMが送られて来たら破棄しておきましょう。闇金は違法業者なので、一度利用するとかなり厄介なことになりかねないからです。それから任意整理も同じですが、債務整理を行うと、個人信用情報に事故情報が登録されてしまうので、その後5年間はクレジットカードを作ったり、ローンを組んだりすることができません。いわゆるブラックと呼ばれるものです。さらに自己破産をした場合は、免責から10年間は銀行との取引ができません。銀行系のクレジットカードを作ったり、銀行でローンを組んだりということができないので、その点にも注意をしておくようにしましょう。また債務整理の対象となった会社では、社内ブラックとなることがあり、ブラックが消えた後に申し込んでも審査に通りにくくなります。
自己破産で特に注意すべき点とは
特に自己破産をする場合に注意したいのは、家や車をすべて没収される可能性があるという点です。また口座も凍結されますので、生活費などはあらかじめおろしておくようにしましょう。もう一つ職業制限というのもあります。金融関係の仕事や士業など、一部の職業の人の場合は一定期間就業できなくなるか、あるいは他の部署に異動させられたりということになります。それから個人向けのカードローンなどは保証人がありませんが、保証人付きでお金を借りて自己破産する時は、その保証人に対して取立てが行われることになります。財産がある場合や金融関係の仕事などに就いている場合、保証人がいる場合などは、自己破産をする前にもう一度考えてみることをお勧めします。そして自己破産の場合、少額管財事件のことも考えておく必要があります。この少額管財事件というのは、管財事件における手続きの負担を減らす目的があります。管財事件とは破産者の財産を債権者に配当するため、破産管財人が選ばれる破産手続きのことをさしています。破産申立てと同時に免責が下りず、財産を処分する場合はこのような手続きを踏むことになります。
少額管財とはどのようなものか
少額管財事件とは、破産管財人が選出される破産手続きの中でも、裁判所に納める予納金の額が少ないものをさします。個人の自己破産によく見られる同時廃止事件よりは金額が大きく、管財事件よりは少なくなっています。また裁判所によって運用するしないが分かれています。
少額管財事件のメリットとは
もちろんすべての管財事件が、少額になるわけではありません。いくつかの条件が当てはまった場合のみ適用されることになります。元々管財事件というのは、破産管財人へ報酬を払わなければなりません。これを引継予納金といいますが、場合によってはかなり高額となることもありました。そのようないきさつからこの予納金の負担を減らすことになり、結果的に少額管財という運用が行われるようになったのです。相場としては、20万円程度と考えておくといいでしょう。個人事業主などで自己破産を行う場合、このシステムにした方が負担は軽くなります。ただし自己破産の場合は、管財事件よりも同時廃止事件の方が、手続きにかかる費用は少なくてすむので、やはりメリットは大きいです。同時廃止というのは、個人の自己破産でよく見られる、破産手続き(かつての破産宣告)の開始と共に廃止の決定をすることです。破産財団をもって破産手続きの費用を支弁するのに不足である場合は、この同時廃止になるということが破産法で規定されています。当然ながらこの場合は管財事件は発生しませんし、破産管財人も選任されることはありません。
裁判所によって異なる運用
しかし財産がいくらかあるとか、免責不許可事由がある場合などには破産管財人が選出されます。免責不許可事由というのは、何らかの理由で免責が認められない場合です。こういった場合には少額管財が適用されることがあります。それから考えると、同時廃止事件の次に費用が少ないのは少額管財事件ということができます。そうはいっても、少額管財に関しては行われていない裁判所もあります。ある裁判所では行われているけれど、また別の所では行われていないと言った方がいいでしょう。なぜそのような事態になるのでしょうか。実はこれは、少額管財の制度そのものと関連があります。自己破産は破産法に則って行われますが、破産法にはこの制度に関する規定がありません。従って、それぞれの裁判所の裁量にまかされるようになっているのが現状です。そのような理由から行っている所とそうでない所が存在するわけです。なおこの方法を運用している裁判所は、都市圏に多いとされています。都市圏では人口も多く、それだけ自己破産の件数も多くなるので、迅速な処理を行う必要が出て来ることになり、少額管財事件が運用されているのです。
少額訴訟をしたい時は弁護士へ
少額管財事件を行う時は、必ず弁護士を代理人に立てるようにしましょう。そうでないと管財事件として処理され、負担が大きくなります。それから裁判所によってはこの運用が行われていないこともあるので、この点も弁護士とよく相談するようにするのがお勧めです。
なぜ弁護士の方がいいのか
それでは自己破産でこの少額管財事件を利用したい時は、どのようにすればいいのでしょうか。まず絶対的な条件として、弁護士を代理人に立てていることが挙げられます。弁護士がついているということは、申立てに関する調査が既になされているわけですから、それより先の処理が迅速に行えるためです。司法書士の場合は、少額管財でなく管財事件で処理されることもあるので、できれば弁護士に頼むようにしましょう。無論少額管財ではなく、最初から同時廃止事件として自己破産を行いたい時にはどちらでも構いません。もっとも弁護士の方が、手続き開始から免責までの時間が短いといわれてはいます。さらに司法書士の場合は、債務額は1社につき上限140万円までと定められています。それ以上の借金がある場合は、基本的に弁護士に依頼することになります。自己破産というと、何もない状態で借金を免除してもらうという意味に取られがちですが、中にはいくらかの財産があって、管財人が間に入るケースも結構あるのです。そのような時に、債務者本人の負担を軽減してくれる少額訴訟は、やはり利用するに越したことはないでしょう。
自己破産をする時の心構え
多少財産があり、同時廃止事件でなく管財事件となる場合は、弁護士に依頼するのがいいでしょう。弁護士を代理人に立てている場合は、管財事件では何かと有利であるためです。また少額管財事件は、すべての裁判所で行われているわけではありません。都市部の裁判所の方が、このシステムが運用されている可能性が高いです。あくまでもその裁判所次第なので、依頼した弁護士とよく話し合い、少額訴訟が行われている裁判所で手続きをしてもらうようにしましょう。借金が払えないのは仕方ないにしても、自己破産というと、つい構えてしまう人がいるかもしれません。債務整理には色々ありますが、自己破産は借金がなくなる代わりに、官報に名前が載ったり、職業制限が発生したりするためです。もちろん破産という言葉に抵抗感がある人もいるでしょう。しかしどう頑張ってもお金が払えない時には、こういう方法を選んで、その後の生活を再建するとっかかりにするといいのです。自己破産に伴う様々なこと、たとえば口座凍結などにも気をつけて、事前にお金をおろすなどしておくようにしましょう。金融関係の仕事をしている人も、気をつけるようにしてください。
まとめ
自己破産をする場合は、同時廃止事件と管財事件があります。個人の場合は大抵前者ですが、もし財産があって債権者に配当する管財事件の場合は、弁護士に依頼して少額管財事件にしてもらいましょう。こうしておくと、通常の管財事件よりも負担が少なくてすむからです。