メリットとデメリットを理解して自己破産の手続きを検討しよう

自己破産は、抱えている借金の元本を無かったことにできる債務整理の中でも最も強力な手続きです。ただ、利用するときにはいくつかの条件とデメリットがあります。それらを含めて、本当に自身にとってメリットが存在するのかということを考えてから手続きを申請する必要があります。

債務者と債権者の双方の立場

自己破産を考える場合には、必ず債務者と債権者の双方の立場から検討しなくてはいけません。借金問題は、民法の契約によって成り立った当事者の問題であるためその当事者を蔑ろにすることは法律的にも良くありません。

債権者にとって極めて不利

債務整理が特徴的なのは、どの手続きを利用したとしても基本的に債権者にとって大きな不利になる可能性が高いことです。そもそも、法律的に債務というのは借金のことを指す言葉です。債権者というのは、債務という借金の返済を要求する権利を有していますので、債務者に対して債務を履行することは正当な権利であるといえます。
しかし、事情が重なることによって債務者が金銭を返済することができなくなることもあります。このような場合は、債権者は債権を回収できない事態を想定して、様々な取り立ての手段を考えなくてはいけません。債務整理は、こういった債権の回収そのものをできないようにする手続きのことを指します。
特に、自己破産はその傾向が非常に強く、最初から債務者の借金が無かったことになりますので債権者の返済を要求する権利そのものが消えてしまうことになります。当然ですが、これは権利を有している人物にとっては非常に大きな問題です。ですから、自己破産を申請する人は裁判所によって厳格に審査され、本当にそういった権利を強制的に奪うだけの理由が存在するのかを確認することが求められます。

債務者の財産への権利はなくなる

債務者が自己破産の申請を行うときには、債権者とのバランスを考慮して一定の制裁処置のようなものがいくつか準備されています。これらはデメリットになるものに違いありませんが、自己破産を利用することによって生じるメリットと比較してもそれほど大きなものにはならない可能性もあります。
ただ、債務者にとって非常に大切なポイントとしては所有している財産をすべて放棄しなくてはならないという点が挙げられます。他の債務整理を利用する場合には、ここまで深刻な制裁処置は存在しません。例えば、個人再生を利用する時にも元本の減額処置は存在しますが、この場合は財産の状況を考慮してマイホームなどを残しておくことも現実的に認められています。これは、債務者が借金を返済する意思が存在するからに他なりません。
一方で、自己破産の場合は返済能力そのものがないと判断してもらう手続きであるため、手元に大きな財産的な価値が存在するものを残しておくことが認められていません。ですから、自己破産の申請を行って審査を行うときには、その時点で債務者側は自身の財産の権利を放棄する覚悟が必要になります。

生活に支障が出る制裁はない

自己破産のペナルティが大きいとはいっても、日常を普通に暮らしていくことはできます。ただ、それまで可能だったことができなくなるのも事実です。具体的な権利の制限が存在しますので、その理解がとても重要になります。

今後クレジットカードは作れない

返済能力が存在しないと判断され、自己破産が無事通った場合には平均的な日常生活を送ることができるようになります。ただ、それまでは可能だった行動ができなくなることも事実です。
具体的には、クレジットカードが作れなくなります。これは、お金を借りるのに信用情報に傷がついた状態になるからです。クレジットカードは、キャッシング枠とショッピング枠という2つの枠で成り立っているサービスで、形としては事前にクレジットカード会社からお金を借りてサービスを利用するという状況になっています。そのため、利用するときには信用情報を調べてこれからクレジットカードを作ろうとしている人物が、過去に借金を大量に抱えていなかったかなどが具体的に調べられることになります。
問題なのは、この信用情報には自己破産に関連する項目が存在することです。自己破産を利用すると、債務整理を使った危険な人物として登録されることになりますので、一部の会社だけではなくほぼすべての金融機関でお金を借りられなくなります。こういった情報登録は、いわゆるブラックリストなどと呼ばれていて自己破産の代表的なペナルティの1つになっています。

生活必需品までは奪われない

自己破産では、日常生活を送るのに必要最低限のものだけを残しておくことができる状態になります。例えば、これに該当するものは生活必需品などです。通常の日常生活で必要ではないと判断された場合には、たとえそれが大きな財産的な価値がないものであっても、債務の弁済に回されることになるため注意が必要です。
こうした、いわゆる自由に扱える財産に関してはいくつかの条件が存在します。まず、破産手続き開始後に働いたりして取得した財産です。手続き開始前に手に入れた金銭については債務の履行に使わなくてはいけない義務がありますが、自己破産の手続きが開始すると債権者への弁済義務がストップしますのでこの限りではなくなります。
また、具体的な金額としては99万円以下の現金に関しても手出し無用であると規定されています。当然ですが、必要以上に金銭の強制徴収を行ってしまうと自己破産を行った後に生活をするための資金まで無くなってしまいます。こうしたことを想定して、最低限の財産は手元に残すことが可能です。
さらに、裁判所が特別に認めたものについても手元に残しておくことができますので、この点については別途確認しておくことが大切です。

行動の制約や情報が公開される

自己破産をした人物は、その手続きをしたことを公に公開されます。また、一部の資格や職業に就くことができないなどの行動の制約も存在します。信用性を裏切る行為をしたので、そういったことに対する制裁処置だと考えればわかりやすいです。

官報や公的資格への影響

債務整理の中でも、特に効力が強い自己破産を行った人はその情報や行動に対して一定のペナルティが課せられます。情報に関しては、債務と債権の関係性において信用性を裏切ったことになりますので、自己破産の手続きをした人は官報にその情報が掲載されます。この場合、氏名と住所の両方が掲載されることになりますので避けることはできません。これは、債務整理の中でも周囲に知られることなく手続きが可能な任意整理とは大きく異なっている点です。
また、行動の制約の側面では公的資格が利用できなくなる制限が存在します。これは、警備員などがわかりやすいです。信用性を裏切ったのですから、同じように信用を担保として行う仕事については安心して任せることができない状況になります。そのため、公共性の強い仕事に関しては自己破産をした人は職業として選択することができないという背景があります。
ただ、こういった制限は一生継続するわけではなく破産手続き中の期間だけです。資格制限が解除されればまた依然と同様にこういった仕事ができるようになるため、この点は誤解をしないようにしておくことです。

自由に住所を変更できない

何らかの事情で住所の変更が必要になったときでも、自己破産の手続き中は住所の移転ができないというデメリットが存在します。事前に住所の変更をしたいと考えているときには、裁判所にその許可を得なくてはいけません。それだけではなく、行動の制限としては出張や海外旅行に関しても同様の処置が行われます。
自己破産中は、その人の審査期間中でもありますので本当に免責をしても問題ない人物であるのかどうかということが厳格に確認されます。ですから、該当地域から無断で出て行くようなことは認められません。ただ、遠出をしたり何らかの理由で必ず住所を移転しなくてはならなくなったときには事前に裁判所に通達しておくことで、柔軟に対応してもらえる可能性が高いです。裁判所がみているのは、あくまでも申請をした人物の免責事由ですので誠意ある対応をしておけば、たとえこういった申し出をしても認められる可能性が高いといえます。
また、このような処置も破産手続きをしている間の話です。手続きが終了して自己破産が認められれば、本人の自由な意思で元の日常生活に戻れますので住所を移転しても問題ありません。

手続きが終わった後のデメリット

自己破産のデメリットは、手続きが終わった後ではなくその手続き中に多いことが特徴です。言い換えると、手続きが終了した後のデメリットについてはメリットと比較してもそれほど多くはないといえます。ですから、自己破産の流れをきちんと理解しておくことが大切です。

破産管財人への郵送物への転送

債務整理の中でも、手続き中に多くのデメリットが存在するのが自己破産の特徴です。これは、自己破産の手続き中の態度をきちんと裁判所が判断しているからに他なりません。現実的にも、破産管財人は破産手続き中に送られてきた債務者の郵送物の内容をチェックすることができるという非常に大きな権限が存在します。こういった制限は、通信の制限と言われています。
破産手続き中に外部と何らかの良くない通信を行い、破産をするのにふさわしくない人物ではないかということがチェックされているのです。そのため、送られてくる内容物に関しても非常に慎重になっておく必要があります。
実際に、自己破産の手続き中はきちんとこのような指示に従っておかないと、免責不許可として自己破産の申請を却下される可能性が高くなります。しかも、免責不許可になるとその事実が市町村の役場に対して通達されることになります。公にその情報が通達されてしまいますので、破産申請をした人物であるということが地域の役所にも知られてしまいます。反対に、免責許可をもらったときにはこういったことにはならないため、手続き中は郵送物に関しても注意をしておく必要があります。

メリットをデメリットが上回るか

自己破産は、手続き中のデメリットさえ守っておけば後は安心して日常生活を送ることができるようになるというメリットがあります。実際に、申請が通ると債権者が元の債務者に対して債権の回収を要求することは一切不可能になります。
何よりも、自己破産の手続き中に行われていた数々の制限の処置が解除されます。基本的に、自己破産の手続きは数ヶ月の間行われることになりますが、この間は債務者に対する誠実さなどを確認しておく準備期間だと考えておけば間違いありません。他の債務整理についても、返済を行うためのシミュレーションを立てて返済計画案というものを作成します。その計画案に従って返済ができるかどうかを数ヶ月間で確認することになりますので、形としてはこれとほとんど変わりません。
自己破産の場合は、その期間中にいくつかの制限を設けて、免責に足りる人物であるかどうかを確認していくことになります。裁判所の対応をみても、この傾向が強いことがわかります。裁判所には裁量権が存在しますので、個別具体的に見て多少は過去の事例から外れるようなことがあっても、免責に足りると判断したときには自己破産を通してくれます。ですから、自己破産のデメリットには必ず理由が存在するということを知っておく必要があります。

まとめ

自己破産には、申請をする人物に対していくつものデメリットが存在することは事実です。しかし、そのデメリットは将来的な免責許可への布石にすぎません。申請が通れば、それらのデメリットはメリットに転じることになりますので、その前提を理解しておくことです。

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