破産と免責に大別できる自己破産手続きの流れ

借金問題解決の最終手段とも呼ばれる自己破産ですが、法律家以外にとっては理解しづらいものです。まず自己破産の概要を頭に入れてもらったうえで、前半部分と後半部分にわけて示します。さらに手続きの流れを概要から詳細のかたちで説明していきます。もはや返済不可能となった借金を帳消しにしてもらい、新しい生活をスタートしましょう。

最終手段・自己破産の概要

自己破産は借金問題解決の最終手段とも呼ぶべきもので、裁判所がこれを認めれば借金が帳消しになります。ただし資格制限や財産処分は甘受しなければなりません。手続きの前半部分が破産で後半部分が免責と呼ばれ、分けて考えると理解しやすいです。

自己破産の大まかな内容

借金問題で首が回らなくなったときに利用する手続きとしては、任意整理や特定調停などがあります。グレーゾーン金利によって生じた過払い金を整理したり、利息をカットしたり、元本を減らしてもらったりして借財を返せるようにするものです。
自己破産は借金を整理する手続きの中では最終手段といってもいいものです。債務者が裁判所に破産の申立をして、返せなくなった借財をすべて帳消しにしてもらいます。その際には家や車などは、すべてお金に換えて返済に充てることが必要です。ただし衣服などの生活必需品は処分しなくても構いません。
借り入れ総額があまりにも多く、利子すら払えなくなった人でも、気持ちを新たに生活を再スタートできることが最大のメリットです。一方で、簡単に借金が帳消しになってしまうことに対する非難の声もあります。実際のところ、ギャンブルや夜遊びで借財を作った人には免責が認められないことがあります。
注意してもらいたいのは、資格制限です。これは破産手続きの開始が決まった人は破産者となり、税理士や会社の取締役に就けなくなるものです。資格制限がかかるのは免責を受けるまでです。

自己破産は大別すると破産と免責

自己破産という手続きは、大別すると破産と免責になります。予備知識がない人にとっては長く複雑なものに見えますが、何の話かわからなくなった場合には破産の部分の話をしているのか、免責の部分の話をしているのか考えてみるといいでしょう。
前半部分にあたる破産手続きとは、借金のほうが財産よりも多く、返済していくことが不可能である、ということを裁判所が判断するものです。そこで不可能であると裁判所が認めると、破産手続きの開始が決まります。続いて、財産を処分せずに借金が帳消しになるのは道理にかなわないので、財産を換金して返済します。
後半部分の免責手続きは、借金を返す必要があるか否かを裁判所が判断するものです。裁判所は債務者に話を聞いて、借金を帳消しにしてよいかを基準に照らし合わせて判断します。この基準は免責不許可事由と呼ばれます。
免責不許可事由は前に少し触れていますが、バリエーションがあります。少しでもこれに触れていたら、絶対に免責が認められないというわけではありません。まず過去7年以内に申立をして、免責を受けている場合があげられます。裁判所による調査に非協力的であったり、嘘をついたりする行為も免責不許可事由に該当します。さらに名前などの個人情報を偽ってお金を借りた場合も、当てはまります。

自己破産手続きの流れ1

自己破産手続きは破産手続き開始の申立てからはじまり、免責が決定したら終了となります。そのあいだに2度の審尋がありますが、財産がある場合には財産を換金して支払いにあてる必要があります。ただし裁判官が認めなければ破産はできません。

自己破産手続きの大まかな流れ

自己破産手続きは、破産手続開始の申立てをすることからスタートします。申立てをする場所は地方裁判所で、大抵の人は弁護士に依頼をして必要書類を整えて行います。申立てをしてからおよそ30日後になると裁判所から、破産審尋の案内がきます。審尋は平たく言えば裁判官との面接のことです。この面接の結果、裁判官が債務者が借金を返済するのは不可能と判断すれば、破産手続開始が決定されます。
手続開始決定後は、50万円以上の財産の有無によって手続きが異なります。その点は後述するので、ここでは同時廃止決定になったとして免責のほうに移ります。
こちらのほうも免責審尋という面接があります。場所は地方裁判所で、審尋をするのは裁判官です。この審尋の焦点は不許可事由があるかないかであり、借金をした理由や返済が滞った理由などについて質問を受けます。不許可事由にはギャンブルや夜遊びのほかにも、返済する気がないのに借金をしたケースも含まれます。
免責が認められれば借金は帳消しになり、新たな人生のスタートラインに立てます。破産手続開始の申立てをしてから免責決定までは、半年から1年となることが一般的です。

同時廃止事件と管財事件

自己破産手続きにおいては、債務者に財産があるかないかによって、免責審尋前の手続きが違います。財産の有無を決める基準は裁判所によりまちまちですが、貨幣換算して50万円という数字が一般的です。財産がないと判断された場合は同時廃止事件といって、そこで破産手続きが終わりになります。一方50万円以上の財産があるケースは管財事件と呼ばれます。こちらは管財にと呼ばれる人が債務者の財産を換金して、債権者に分けるプロセスがあります。
財産として認められるのはある程度の値段で売れるもので、20万円がひとつの目安です。よく財産として管財人に処分されるのは、不動産や自動車、残高20万円以上の預金です。マイホームは住宅ローンの状況によって財産と認められたり、認められなかったりします。売却してもローン残高のほうが上回る場合には、財産とされないことが多いです。それに対して布団や台所用具などの生活必需品は処分が禁止されていますし、位牌などの家族の尊厳に関わるものの処分ももちろんダメです。
管財事件にかかる費用と時間が多いことを考慮して、一部の裁判所では少額管財手続きが導入されています。予納金が安く、手続きが短いことが魅力で、裁判所により名称が異なります。

自己破産手続きの流れ2

自己破産手続きのスタートは、申立書類を作って提出することです。必要な書類は、管轄の裁判所や債務者の置かれている状況によって変わります。書類が受理されてたら次は審尋で、書類との合わせた判断で破産手続きを始めるのが妥当であるか否かが判断されます。

申立書類の作成と提出

自己破産手続きは申立て書類を作成して提出することからはじまります。申立てを申請する破産手続開始・免責申立書はもちろんのこと、いろいろな書類を提出する必要があります。なお必要な書類は裁判所や債務者によって異なるので、弁護士と揃えるのがいいでしょう。
破産手続開始・免責申立書は地方裁判所の破産係で手に入れられます。裁判所によって記入欄に違いがあるので、申立てをする地方裁判所のものでなければいけません。申立てをする人の住所地を管轄する地方裁判所ということで、本籍地や住民票がある場所の裁判所ではないので注意が必要です。
その他の書類としてはまず住民票や委任状、債権者一覧表が欠かせません。債権者一覧表には、金融機関や友人知人などお金を借りた人と借りた額を明示します。さらに資産目録や報告書も必要です。資産目録は預金や不動産、車など財産として扱われるものを記入します。報告書には、いずれ破産審尋で話すことになる、破産することになった経済の事情について書きます。
くわえて給与明細書や源泉徴収票なども求めに応じて提出しますし、最近退職した場合には退職金支給額証明書も出します。提出する前に保存用にコピーをとっておくのがおすすめです。

破産審尋と破産手続開始決定

申立書類が受理されてからおよそ30日ほどで送られてくるのが、破産審尋の呼出状です。これは破産審尋という面接の日時が書かれたもので、破産手続きをしたいならば必ず行かなければなりません。
そこ裁判官がする質問には、まず借金が返済できなくなたった理由や財産の有無があります。ほかには免責不許可事由を確認するための質問が多いようです。時間は10分から15分間程度ですが、同時廃止事件の場合にはもっと短くなることもあります。
裁判官は申立書類と面接の内容を総合的に判断して、破産手続きを開始するか否かを決めます。そのときにマイナスに働くのが、書類と面接の内容の食い違いです。自分の状況を正直に伝えようという気持ちが見えない、と判断されれば破産手続きの開始が認められなくなります。誠実な姿勢が大切なのは審尋時の受け答えも同様です。反抗的な態度を取ったり、乱暴な言葉遣いで話したりすると、話の内容が信用されなくなるので注意しましょう。
申立書類と審尋の内容に問題がなければ、破産手続きの開始が決定されます。申立てからこの決定までは、60日ほどとなることが多いです。

自己破産手続きの流れ3

免責においても審尋という面接があり、場所は裁判所で相手は裁判官です。面接の目的は借金を帳消しにするのが妥当か否かを判断することで、免責が決定されれば通知があります。それからいくらかの手続きを経て最終的な確定となります。

免責審尋とそれに続く免責確定

破産についての手続きが終了をしたら、免責の手続きになります。これは平たく言えば、借金を帳消しにすることの妥当性を裁判所が判断するものです。こちらも裁判官と債務者が面接をする審尋があります。
破産審尋と同様に、裁判所から免責審尋の呼び出しがあるので、通知された日時に裁判所に出向いてください。弁護士に手続きを依頼している場合でも本人が行かなければなりません。
免責審尋では、債務者本人のやり直す意欲を問われることが多いです。借りたお金が返せなくなったわけですから、貸してくれた人や組織に対する気持ちを真摯に語ることが必要です。ほかにも不許可事由があるかどうかの確認もあり、そちらも大変重要です。
債権者が免責に対して異議がある場合は、審尋に出席して異議申し立てをする場合があります。またそれから1ヶ月の間も異議申し手をすることが可能です。
決定した場合には、裁判所から通知が送られてきます。ただしまだ確定とはならず、決定通知から2週間後に官報に公示され、さらに2週間以内に異議申し立てがないときに免責が確定となります。借金が帳消しなり、資格制限なども解消されます。

自己破産の費用と非免責債権

自己破産手続きをするときは、弁護士に依頼するのが一般的です。かかる費用は着手金と報酬金にわかれます。報酬の額は弁護士に決める権利がありますが、債権者数によって費用をわけているところが多いです。債権者が10以下の場合には着手金20万円、報酬金20万としている事務所が多く見られます。
管財事件となった場合には、財産の処分を行う管財人に報酬を支払う必要があるため、予納金を納めることが欠かせません。その額は50万円ほどですが、少額管財となった場合には20万円ほどですみます。同時廃止事件の場合には1万円から1万5千円ほどです。これ以外にも申立てにかかる手数料と郵送にかかる切手代を支払います。申立手数料は1,500円で、切手代は5千円ほどです。同時廃止事件において弁護士に依頼せず債務者本人が行うときはおよそ4万円
の総額になることもあります。
あまり知られていませんが、免責になったあとも支払い義務が解消されないものがいくつかあります。代表的なものは税金や社会保険料で、未払いがある場合はさかのぼってすべて支払わなければなりません。さらに罰金や科料、従業員の未払い賃金などもあります。これらは非免責債権と呼ばれています。

まとめ

自己破産手続きの流れは上記のとおりですが、多くの人が心配な気持ちを抱くのが2回の審尋でしょう。自分の失敗と向き合うことには辛さと恥ずかしさが伴いますが、救済制度の力を借りるために自分の過去と真摯に向き合うことが必要です。

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